契約書の締結作業。紙で行う場合、印刷・署名捺印・郵送手配など、単純作業なのに意外と手間がかかります。
そんな煩雑な作業を大きく減らしてくれるのが「電子締結」です。
契約書をデータ上でやり取りできるため、書面締結で必要だった多くの作業が不要になり、業務効率化につながります。
本記事では、私が実際に使っている電子締結サービス「クラウドサイン」を例に、電子締結のメリットや導入・運用方法を紹介します。
また、電子締結へ切り替えるにあたって準備すべきことや、残る課題についても解説します。
「契約書のやり取りをもっとスムーズにしたい!」という方は、ぜひ参考にしてみてください。
単純作業なのに手間がかかる!書面締結の負担を再確認
書面での契約書締結は、単純作業なのに意外と手間がかかります。
- 契約書を2部印刷して製本する
- 署名(または社判を押す)、署名欄と製本部分へ捺印
- 相手方への送付用かがみを作成する
- 返送用封筒に自社宛先を記入して同封する
- レターパックなど追跡可能な方法で郵送手配する
- 返送された契約書を確認し、ファイリングする
製本から発送までの作業だけでも、15分〜30分程度かかります。
さらに、締結前の条文修正や契約交渉も紙ベースで行うことになれば、さらに時間と手間がかかります。
書面締結において、時間だけでなくコスト面の負担も見逃せません。
- 郵送費:レターパックなど追跡可能な形式で郵送するため、1件あたりの郵送費が地味に痛い
- 印刷代:出力することに紙やインクのコスト
- 収入印紙代:契約内容によっては収入印紙が必要。契約金額によっては数千円になることも
- 管理コスト:締結済みの契約書はファイリングされており、探すのに時間がかかる
こう見ると、書面締結がいかにコストを伴う作業なのかを実感します。
この面倒くささを解決してくれるのが、「電子締結」という方法です。
「電子締結」とは、データで署名捺印を行うこと
電子締結とは、契約書の署名捺印を、電子データ上でやり取りする締結方法です。
クラウドサービスなどの専用ツールを用いて行います。
- 書面締結と同じ法的効力を持つ(電子署名法に基づく)
- 電子締結の契約書は、収入印紙が不要(2025年11月現在)
製本作業や郵送の手間もなくなるため、紙の契約書よりも圧倒的に楽です。
電子締結サービスは複数あるのですが、本記事では私が使っている「クラウドサイン」を例に、導入の流れと便利さを紹介します。
クラウドサイン公式ページ
電子締結サービス「クラウドサイン」の概要と導入・運用方法
クラウドサインは、弁護士ドットコム株式会社が提供する電子締結サービスです。
電子締結では「電子帳簿保存法(電帳法)」といった法令を遵守する必要があります。
法令の大まかな内容は知っておくのがベターですが、クラウドサインはタイムスタンプなどの改ざん防止機能が実装されているため、電帳法に詳しくなくても使えて安心です。
導入の流れ:導入前の運用ルール設定
電子締結をスムーズに始めるために、まずは事前準備を行いましょう。
契約書の雛形を作成する
「機密保持契約書(一方向、双方向の2種)」「業務委託契約書」は、少なくとも用意しておきたい雛形です。
Wordなどで作成し、清書版はPDFデータで保存しておきましょう。
契約書ごとの承認ルートを決める
契約書を送る際、「誰が送付先を確認するのか」「誰が署名捺印を担当するのか」を、契約書ごとに決めておきましょう。
最も簡単な承認ルートは、「送付者」→「部門長(送付先を確認)」→「取締役(署名捺印)」→「相手方」です。
ルート設定は、組織体制や従業員が持つ権限によって異なるため、上司と相談の上で検討しましょう。
承認ルートが決まったら、自社の社内ルールとして周知します。
導入の流れ:電子締結サービスを導入
ここからは、「クラウドサイン」を導入したと仮定してお話しします。
初期設定を行う
サービス導入後は、運用できる状態にするため初期設定を行います。
- ユーザー登録
- 契約書雛形のテンプレート登録
を行い、社内の利用メンバーに共有しましょう。
運用ルールの工夫で管理をよりスムーズに
下記の運用ルールも加えておくと、契約書の管理がより効果的になります。
件名に「相手方の企業名」を入れる
契約書締結を設定する際、最初に「件名」の入力欄が表示されます。
ここに「株式会社◯◯様_業務委託契約書」など「相手方の企業名」を入れておくことで、契約書の検索が非常に楽になります。
契約書雛形を常に最新版にする
雛形を修正したら、「PDFに保存」「クラウドサインのテンプレートを差し替え」を必ず行いましょう。
担当部署でマニュアルを作成し、契約書の締結や修正の流れを明確にしておくと良いです。
電子締結時の操作方法
電子締結は、クラウドサインにログインしてテンプレートを選択するか、書類をアップロードして行います。
その後は、画面の案内に従って設定していくだけ簡単に完了できます。
- 締結したい契約書をテンプレートから選択(または書類をPDFでアップロード)
- 承認ルートを設定
- 署名捺印またはチェックを入れてもらう箇所を設定
- 確認画面で、メッセージ(メール送信時と同じような案内文)を作成
- 送信
- 承認ルート順に通知が届き、それぞれ承認や署名等を行う
- 締結完了すると、通知メールが届く
電子締結に切り替えて得られた3つの効果
書面から電子締結に切り替えたことで、以下のような効果を実感しています。
契約書送付が早くなった
書面締結で必要だった、契約書の製本、送付用の封筒・かがみ作成といった作業がなくなりました。
相手への契約書送付は、メール送信のように手軽に行えるため、大幅な時短に。
ペーパーレスにもつながりました。
契約書を探しやすくなった
締結待ち・締結済のどちらも、クラウドサインの検索ボックスから探すことができます。
これにより、「あの取引先と、いつ、どのような契約を結んでいるか知りたい」といった問い合わせが来ても、紙のファイルから該当の契約書を探す必要がなくなりました。
契約締結の進捗管理が楽になった
クラウドサインでは、「承認ルートのどこで手続きが止まっているか」も可視化されます。
締結完了の通知がなかなか来ない時は、承認ルートを確認して「リマインド」ボタンをクリックするだけで、止めている人への再送が可能。
進捗管理が楽になりました。
たまに書面締結で対応することもあるのですが、そのたびに、電子締結がいかに効率的かを実感しています。
電子締結へ切り替えるにあたり、残る課題と対策
たしかに電子締結は便利なのですが、切り替えにあたり考慮すべき課題も存在します。
相手方が電子締結NGのケースがある
体感として、特に官公庁や一部の大手企業では、電子締結を断られるケースがあります。
この場合、無理強いせず書面で対応できる体制にしておきましょう。
「原則は電子締結をお願いして、難しい場合は書面で対応」という柔軟な運用ルールにすると良いです。
承認用URLの有効期限がある
例えばクラウドサインでは、「通知メールの受信から10日間」で承認用URLの有効期限が設定されています。
期間内に承認や署名捺印を行われない場合、再送が必要です。
契約書を送ってから締結通知がなかなか来ない時は、有効期限が切れる前にリマインドを送ってあげましょう。
書面締結した契約書の保管方法
電子締結はクラウド上にデータが残りますが、書面締結した契約書をどのように保管するかも、社内ルールとして決めておく必要があります。
検索性を考慮すると、スキャンしてデータ化してから、原本をファイリングする運用がオススメです。
データ保存用の専用フォルダを決めておき、ファイル名を「相手方の名称_書類名_締結日」としておくと、書類を探す時に便利です。
契約書雛形の修正要望が来る
相手方から、契約書雛形の条文修正を相談されるケースがあります。
社内の法務担当者や経営陣の判断で解決できない場合があるため、顧問弁護士を頼るのがベターです。
また、法務に関してある程度の基礎知識があると対応がスムーズになります。
「ビジネス実務法務検定3級」といった資格で、基礎的なことを学んでおくと役立ちます。
ビジネス実務法務検定3級で法務の基礎知識をつける
まとめ:契約書の電子締結で、締結手続きを効率化しよう
契約書を電子締結に切り替えることで、煩雑な手続きを軽減し、大幅な業務効率化ができます。
- 契約書を電子データ上でやり取りし、電子署名で締結する方法
- 書面締結と同じ法的効力を持つ
- 印刷や郵送の手間がなく、収入印紙も不要
- 契約締結までのスピードが大幅に短縮できる
- 書類の検索・管理がしやすくなる
- 進捗管理が簡単になる
- 相手方が書面締結を希望する場合は、書面で対応できるようにする
- 電子/書面の保管方法を決めておく
- 承認が止まっている場合はリマインドが必要
- 条文修正の検討は、専門家のサポートを受けるのがベター
「まだ電子締結サービスを導入していない」という方は、まずは社内への提案や、資料請求から始めてみましょう。
クラウドサインの他にも、電子締結サービスとして「Docusign」「GMOサイン」などがあります。
自社のニーズに合うものを探してみてくださいね。
